Vol.4 寄稿者募集 / V系7弦 / BUCK-TICKの新譜をSF的に夢想する

あらためてセカンドアルバムの寄稿者を募集、テーマ『丘』、8月31日〆切。そして、佐藤久のコラム「V系7弦」と、渡邉清文の新連載をお届けする。
V系SFの店 2024.05.02
誰でも

 久しぶりのレター配信となりましたが、V系SF通信Vol.4をお届けいたいします。今回の記事は以下の3本。7弦ギターへのこだわりコラムと、BUCK-TICK新譜発売までの期間限定企画開始。

目次

  • セカンドアルバム・寄稿者募集のお知らせ

  • コラム「V系7弦」(佐藤久)

  • BUCK-TICKの新譜をSF的に夢想する 第1回 アコースティック・ギター・テクノ(渡邉清文)

セカンドアルバム・寄稿者募集のお知らせ

『V系SFの店』今年も出店します

 昨年11月の文学フリマ東京38にて初出店した〈V系SFの店〉。ファースト・アルバムとなるV系SFアンソロジー『漆黒の熱量』をリリースした昨年に続いて、2024年12月1日開催の文学フリマ東京39にも出店し、『セカンドアルバム(題名未定)』をリリースいたします。

 そこで、このアンソロジーに寄稿くださる方を募集いたします。

テーマは『丘』

「広義のV系音楽をモチーフとした広義のSF」という、間口の広い条件で作品を募った昨年ですが、今年は募集作品のテーマを絞らせていただきます。テーマは『丘』です。

 V系音楽の世界には「三大丘」があると言われています。すなわち、DIR EN GREYの「アクロの丘」、PIERROTの「メギドの丘」、そしてPlastic Treeの「絶望の丘」のことですが、これら3曲に限らず、タイトルや歌詞の中に「丘」を含む曲、丘を舞台にしている曲は多いのです。コアのV系バンドだけでなく、例えば洋楽でもデヴィッド・ボウイに「Up the Hill Backwards」が、BAUHAUSに「Hollow Hills」いっぽうSFの世界では、盲目の吟遊詩人ライスリングが歌う「地球の緑の丘」という詩があまりにも有名です。

 とはいえ、モチーフとする楽曲は、題名や歌詞に「丘」が含まれるものだけに限定されません。これから書かれる作品において、舞台が「丘」であるなど、「丘」に関係することが条件です。

 山でも川でも、谷でも湖でも、海でも島でもなく歌われる「丘」とは何か? 丘に思いを馳せ、想像力の翼を羽ばたかせた作品を募集いたします。

応募方法

 X(Twitter)のアカウント、V系SFの店(@visualsf2023)にDMで連絡願います。

募集要項

ジャンル

  • 広義のヴィジュアル系音楽をモチーフにした広義のSF。

  • 狭く定義されたジャンルのものだけが対象ではありません。あなたがV系音楽だと感じる楽曲を、SFだと思う創作にしてください。

表現形式

  • 創作であれば、小説に限定いたしません。

  • 戯曲、現代詩なども歓迎。複数形式を融合させた作品も可です。

文字数

  • 小説の場合、1万字前後。1万5千字を超える場合は応相談。

  • 標準フォーマットは、B6サイズで1ページあたり48字×19行。変更可。小説以外の表現形式の場合、このフォーマットで8〜20ページくらいに収まる長さでお願いいたします。1作品が短い詩歌については、複数作品での寄稿をお願いいたします。

謝礼

  • 完成したアンソロジー 1冊

  • 謝礼をお支払いいたします。原則はAmazonギフトとさせていただき、他の方法を希望の場合は応相談。金額は作品の長さに関わらず、一律 ¥5,000 とさせていただきます。

〆切

  • 方針回答 2024年7月31日

  • 原稿〆切 2024年8月31日

  • 7月31日までに、表現方法、参照楽曲、想定文字数、概要(100文字程度。長くても可)をアンケートで回答いただく予定でいます。これは、進捗確認と全体ボリュームを編集側で想定するためのものです。参照楽曲が他の執筆者と被る可能性はありますが、それで変更をお願いすることはございません。

注意事項

  • 著作権は執筆者に帰属します。

  • 応募作品は2024年12月に出版される同人誌に掲載されます。そのため、2024年中に公開される他の媒体への寄稿は控えていただくようお願いいたします。

  • WEBで一部または全部が公開される可能性があります。

以上。

コラム「V系7弦」

佐藤久

 エレキギターは通常、6本の弦が張られている。演奏者から見て一番下の細い弦が1弦で、最も高い音が出る。2弦、3弦と演奏者から見て上の弦になるにつれ、弦が太くなり音が低くなる。一番上の6弦が最も太く、低い音が出る。

 7弦ギターはそこに、7本目のさらに太い弦を足したもので、6弦ギターでは出せない低音を出すことができるギターだ。スティーヴ・ヴァイの代名詞でもあり、超絶技巧で知られるジョン・ペトルーシ(DREAMTHEATER)や、ニューメタルの巨人・マンキーとヘッド(KoЯn)が使用し、現代のメタルシーンに欠かせないものとなっている。(※1)6弦ギターよりも指板が広く、ネックが長く、弦も太く押弦の難易度が上がる。音も本体もゴツくて重い。

 実は、V系バンドには7弦ギターを使用するギタリストが多い。悠介(lynch.)、ミヤ(MUCC)、Ray・愛朔(DEVILOOF)、Yu-taro(NOCTURNAL BLOODLUST)薫・Die(DIR EN GREY)など、ヘヴィな音のギタリストたちだ。

 ムキムキの海外メタルのギタリストがズンズン弾く様子もたまらないが、V系の華奢で中性的なギタリストが7弦を操り轟音を出す姿は、少年が巨大な獣を従えているようで、彼らにしか出せない神秘的な魅力がある。『十二国記』(小野不由美)の泰麒が饕餮を従えているようだといえば、読書家にはわかりやすいだろうか。(※2)

 弾きづらい、重い、高い、あんまり売ってない。検索すると「7弦ギター いらない」とサジェストが出てくる。しかし何といっても7弦は、弦が1本多いのだ。強いのだ。フリーダムガンダムなのだ。番組後半に出てくるハイパーフォームなのだ。対バンイベントで出てきた知らないバンドのギタリストが7弦を提げていただけで、もう得点が高い。さらに8弦、ダブルネック、トリプルネックとギターの最強フォームは進化し、アンプやキャビネットのデカさ、エフェクターボードの複雑さ(あるいは潔い単純さ)など、武器は増えていく。V系バンドがよく特集されていたギター雑誌『GIGS』が休刊になってしまったのは痛恨の極みだが、そのヴィジュアルもまた、たしかに”V系”の一要素なのだ。

※注釈

  • “なにメタル”かはメタラーが不毛な戦争をし続けているが、『現代メタルガイドブック』(監修・和田信一郎 Pヴァイン刊)にV系も含めわかりやすく網羅されているので、是非参照されたい。名著である。

  • さいきんデカくなりつつある人もいる。

BUCK-TICKの新譜をSF的に夢想する(新連載)

渡邉清文

第1回 アコースティック・ギター・テクノ

イントロダクション

 BUCK-TICKはアルバムのレコーディングに入った。今井寿のインスタグラムでの発表以来、ギターの写真だけが断続的に更新されている。FCの会報や『音楽の人』のインタビューによると、櫻井敦司の急逝から、『バクチク現象』の準備として並行して曲作りが進んでいたらしい。4人だけでやる、今井とヒデが自分の曲で歌う、インストだけの曲もやる、などといった新曲のヒントがインタビューには散りばめられているけれど、実際にどんな曲になるのかは、新譜が届くまで待つしかない。

 その間の楽しみとして、過去曲を振り返り、その中に潜む可能性を語っていこうと思う。予想とかではなく、あくまで猶予期間の夢想として、できればSF的に。

アコースティック・ギター・テクノ

『Sexy Stream Liner』の収録曲、「My Fuckin' Valentine」はBUCK-TICKのテクノ、インダストリアル路線の曲の代表格で、ライブで何度も演奏されてきた楽曲である。

 今井寿の作詞による歌詞はサイバーパンク的世界観に乗っかったデカダンスと猥褻の紙一重で、リズミカルに韻を踏み、それを今井・櫻井のツイン・ボーカルが掛け合いで歌う。打ち込み重視の音響は、発表された27年前と違い今となっては珍しくはないけれど、それでも「未来的」だ。

 いや、そんなことはファンならば、よく知っていることではある。27年間、何度も何度も聴いてきたのだから。そうではなく……

 この曲が、世界中のインダストリアルの疾い曲の中でもユニークなのは、SF的歌詞でも電子音響でもない。アコースティック・ギターの存在だと思う。中盤、今井、櫻井の掛け合いの歌から間奏に入ると、そこで鳴るのは星野英彦の奏でるアコースティック・ギターの音色だ。ライブでのヒデは、間奏に至るまでは肩から下げたエレキギターを弾いていて、間奏に入るとスタンドに設置されたアコースティックギターを弾く。歌いながらギターとテルミンを使い分ける今井の横にヒデがいる。「ギタリストが二人いるロックバンド」であることを活かした、デジタルとアナログの融合がここにある。

 今井がこの手法を用いた曲は他にもあり、別プロジェクトSCHWEINの、リミックス「Lard, Lips, Liquor (Shadows)」が異彩を放っている。PIGのレイモンド・ワッツ、KMFDMのサシャ・コニエツコに櫻井、今井の4人によって2001年に結成されたSCHWEINは、ボーカルに日英独語が飛び交うカオスなユニットである。「Lard, ..」の原曲は、櫻井敦司の魔王ぶりが冒頭から発揮され「やがて幕は切り裂かれる 今宵帝王となる 夜を食いつくし 美酒とお前の肉の中」と歌い、中盤でサシャとレイモンドのドイツ語、英語パートも挿入されるアップテンポな曲だ。これを今井と横山和俊によるリミックスではテンポを落とし、原曲には無いアコースティックギターを冒頭から挿入する。

 リミックス版にはメンバーのレイモンドや今井の他に、ケン・イシイや、1994年から2000年までNine Inch NailsにいたCharlie Clouserなどがリミキサーとして参加しているのだが、アコギの音を敢えて加えてみせたのは今井だけである。リミックス集であるシングル『囁き』では、「MY FUCKIN’…」のリミックスをギュンター・シュルツ(サシャと同じくKMFDMのメンバー)が手掛けているが、ここでは間奏のアコースティック・ギターが丸ごとカットされているのとは対照的だ。

参照曲

BUCK-TICK

  • MY FUCKIN' VALENTINE [作詞:今井寿 / 作曲:今井寿](アルバム『SEXY STREAM LINER』収録)

  • MY FUCKIN' VALENTINE -enemy mix(full)- [Remixed by GUNTER SCHULZ(KMFDM)](シングル『囁き』収録)

SCHWEIN

  • Lard, Lips, Liquor [作詞:Atsushi Sakurai, Raymond Watts, Sascha Konietzko / 作曲: Raymond Watts] (アルバム『SCHWEINSTEIN』収録)

  • Lard, Lips Liquor (Shadows) [Remixed by Hisashi Imai & Kazutoshi Yokoyama](アルバム『SON OF SCHWEINSTEIN』収録)

以上。

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